進行・再発例(8)

Q8.粘液型脂肪肉腫という病気で治療をしてきましたが、これまで使ってきた抗がん剤が効かなくなったので、エリブリン(ハラヴェン)というお薬を使う予定です。どんなお薬なのでしょうか。また、どんな副作用があるのでしょうか?
 
医者回答者:内藤 陽一先生
国立がん研究センター東病院 乳腺・腫瘍内科
 
 
 
 

A.エリブリンは、抗がん剤の一種で、がんや肉腫の細胞が増えていくときに必要な、微小管という細胞内の構造を抑える働きがあります。
 

肉腫については、海外での大規模な研究で、エリブリンを使用した患者さんは、ダカルバジン (これも抗がん剤です) を使用した患者さんより長生きできたことが証明されて、日本や欧米諸国でも使用できるようになりました。
 

海外で行われたこの研究には、脂肪肉腫の患者さんと平滑筋肉腫の患者さんが参加されていました。
日本ではより小規模な研究がなされ、脂肪肉腫、平滑筋肉腫以外の患者さんも治療されたことから、脂肪肉腫や平滑筋肉腫を含め広く「軟部肉腫」に対して使用することができます。

 

通常は、アンスラサイクリン系薬剤 (アドリアマイシン/ドキソルビシンなど) を使用した後で、エリブリンを使用します。
使用にあたっては、担当の先生とよく相談されることをお勧めします。
なお、このエリブリンは、乳がんでも承認され、広く使用されています。

 

重要な副作用として、白血球や好中球 (白血球の一種です) が減少し、細菌などへの抵抗力が弱くなること、感染症を起こすことが挙げられます。
白血球や好中球の減少は、ずっと続くのではなく、治療中の一定の期間おこり自然に回復しますが、白血球や好中球が減少しているときに感染すると、重篤な感染症になる (いわゆる、「こじれる」ことになります) 心配があります。
そのため、白血球や好中球が減少しているときに、熱が出た場合 (通常、37.5度以上の場合)、直ちに抗菌薬を使用することが勧められます。
エリブリンは、点滴をした後で、薬の反応として熱が出る場合もあります。
担当の先生と、熱が出た時にどうするかを相談しておくことをお勧めします。

 

そのほか重大な副作用には、間質性肺炎、肝機能障害、末梢神経障害 (典型的には、指先や足がしびれる) などがあります。
吐き気は他の抗がん剤と比べても、比較的軽度ですが、つらいときは吐き気止めを使用していただくとよいでしょう。
日本の研究の際には、脱毛がおよそ6割の方で見られています。
肝機能の悪い方では、副作用が強くなる可能性があり、場合によっては用量を減らして使用することがあります。

 

エリブリンは、使用することで寿命が延びていることが証明されている数少ない抗がん剤の一つです。
有効に使用するためにも、その効果、副作用を知りながら、担当の先生とよく話し合って使用することをお勧めします。

 

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