局所治療(5)

Q5.大腿骨の骨肉腫と診断されました。先生からは、約一年間の抗がん剤治療と局所の根治手術が必要と言われています。どのような治療、治療スケジュールになるのでしょうか?
 
医者回答者:小倉 浩一先生

国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍科
 
 
 
 
 
A.骨肉腫の患者さんの多くは、病院で骨肉腫と診断された時点ですでに肺をはじめとした臓器に画像検査では描出されない微小な転移を生じている可能性が高いと考えられており、原発巣である大腿骨の病変の外科的切除による局所制御(根治手術)に加え、すでに生じていると考えられる微小な転移を制御するために、手術の前後に抗がん剤治療(補助化学療法)を行います。
 

手術は切・離断術と患肢温存手術にわけられます。
腫瘍が神経・血管を巻きこんだり、病的骨折を併発したりすると、切・離断術を余儀なくされることがありますが、現在は周囲の筋肉や骨などの正常組織を含めた広範切除を行い、手足(四肢)を温存する患肢温存手術が主流となっています。
また、切除により生じた骨欠損部は腫瘍用人工関節や血管柄付き腓骨や処理骨に代表される自家骨などを用いて再建を行います。

 

抗がん剤治療(補助化学療法)で用いる薬剤はメトトレキサート大量療法(HD-MTX)、ドキソルビシン(DOX)、シスプラチン(CDDP)(MAP療法)です。
 

わが国で1990年代に実施された骨肉腫に対する化学療法NECO-93、95J(Neoadjuvant Chemotherapy for Osteosarcoma 93, 95 Japan)において、これらの薬剤を用いた術前化学療法の効果が不十分な患者さんでは術後化学療法にイフォマイド(IFO)を加えた化学療法を行うことにより予後が改善する可能性が示唆されました。
 

現在、これを検証し、骨肉腫に対する標準治療を確立するため、これら4つの薬剤を用いた共通のプロトコールによる多施設共同臨床試験JCOG0905が2010年より日本全国で開始されています。
 

この臨床試験での治療のスケジュールでは、まず、手術前に抗がん剤治療を行い、その後、原発巣の切除を行い、さらに手術後に抗がん剤治療を行います。
 

手術前の抗がん剤治療ではMAP療法を11週間行います。
手術後の抗がん剤治療のスケジュールは、手術で切除した検体を顕微鏡で検査し、手術前の抗がん剤治療の効果を確認したうえで決定します。

 

手術前の抗がん剤治療の効果の高い患者さんでは、手術後の抗がん剤治療としてMAP療法を16週間行います。
手術前の抗がん剤治療の効果の低い患者さんでは、MAP療法を16週間行うグループとMAP療法にIFOを併用した治療を26週間行うグループに分けて治療が行われます。

 

現時点で最もエビデンスのある骨肉腫治療はこの臨床試験プロトコールにのっとった治療だと考えられますが、この臨床試験の全治療期間は約30~40週間です。
 
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