進行・再発例(5)

Q5.最近、軟部肉腫に対して、いくつかの新しいお薬(抗がん剤)が出たと聞きました。どのようなお薬が出たのでしょうか?また、やはり新しく出たお薬の方がよく効くのでしょうか?
 
下井先生写真(トリミング)回答者:下井 辰徳先生
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科
 
 
 
 
A.最近、個別の治療が決まっていない進行悪性軟部腫瘍に対しては、新しい抗がん剤が承認されました。
 

例えば、2012年承認のパゾパニブ(ヴォトリエント)、2015年承認のトラベクテジン(ヨンデリス)、2016年に肉腫でも使えるようになったエリブリンです。
それまではドキソルビシン(アドリアマイシンも同じ薬剤)やイホスファミドしかなかったことからすると、治療選択肢が増えてきたということになります。
新しい治療の方が良く効きそうな期待も持たれるかもしれません。

 

これまで、進行悪性軟部腫瘍に対する抗がん剤治療として、ドキソルビシン/アドリアマイシンと比較してより効果が高い(寿命を延ばしてくれる)抗がん剤はありませんでした。
1980年代から数々の抗がん剤が比較されてきましたが、上回る成績を残せなかったということです。
イホスファミドは、ドキソルビシン/アドリアマイシンの効果を上回りはしないまでも、ほぼ同等の治療効果ということで、現在も初回治療選択肢の一つです。

 

上記に述べたように、最近承認された3つの抗がん剤(パゾパニブ、トラベクテジン、エリブリン)は、2番手以降の抗がん剤として、その有効性が示されています。
 
パゾパニブは、毎日1回内服する抗がん剤です。
食間といって、食事摂取の1時間以上前か、食後2時間以降に、飲む必要があります。
パゾパニブの治療効果については、PALETTE試験で確認されました。
脂肪肉腫や個別の治療が決まっている肉腫(横紋筋肉腫など)を除いた、1種類以上の抗がん剤治療を行って病状が進行した軟部肉腫の患者さんが、パゾパニブか無治療(プラセボという偽薬)かに、ランダムに振り分けられて治療効果を比較されました。
この結果、無治療に比べて、パゾパニブ投与の患者さんのほうが、病状が悪化するまでの時間が遅かったという結果でした。
ただし、寿命延長の効果については証明されていません。

 

トラベクテジンは、カリブ海に生息するホヤ貝の一種から抽出された抗がん剤成分です。
中心静脈カテーテルを挿入の上、24時間投与を3週間間隔で行います。
トラベクテジンは、ダカルバジンという、欧米で軟部肉腫に承認されている薬剤との比較で、有効性が確認されています。
この試験では、1-2種類以上の抗がん剤治療された脂肪肉腫か平滑筋肉腫の患者さんが、トラベクテジンとダカルバジンのいずれかに振り分けられて治療されています。

 

この比較では、病状が悪化するまでの時間がトラベクテジン群で遅かったという結果でした。
ただし、寿命延長の効果については証明されていません。
また、日本で行われた試験では、染色体転座を有する肉腫(translocation related sarcoma)を対象として、トラベテクテジンか偽薬(プラセボ)のいずれかに振り分けられて効果を見た試験が行われています。
この結果、トラベクテジンは偽薬よりも病状が悪化するまでの時間が長かった(長く抑えていられた)という結論でした。
ただし、寿命延長の効果については証明されていません。

 

エリブリンは、クロイソカイメンの成分から作られた抗がん剤で、1日目と8日目に投与して、3週間間隔で投与します。
エリブリンについては、すでに2種類以上の治療が行われた平滑筋肉腫と脂肪肉腫の患者さんを対象に、ダカルバジンとの比較が行われています。
患者さんはエリブリンかダカルバジンかに振り分けられて効果を見ました。
この結果、エリブリンを投与された患者さんのほうが、ダカルバジンを投与された患者さんよりも寿命が長いという結果が認められました。

 

上記の研究結果を元に、進行悪性軟部腫瘍患者さんでは、日本でもこれら3剤が使用可能となっています。
ただし、上記示しましたように、薬剤としては2番手以降の選択肢として研究されていること、偽薬や日本で保険承認されていないダカルバジンが対照であった研究となっています。
トラベクテジンは染色体転座を有する肉腫や平滑筋肉腫や脂肪肉腫、エリブリンについては、平滑筋肉腫や脂肪肉腫に限ったデータです。
この3剤同士での優劣も決まっていません。
よって、実際には副作用の内容と、体調に合わせて、より患者さんに合った抗がん剤選択をすることが推奨されています。

 

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