放射線治療(1)

Q1.仙骨の脊索腫と診断されました。手術と重粒子線、2通りの治療法があると説明されました。それぞれの治療法の長所、短所にはどのようなものがあるのでしょうか?
 

医者回答者:末原 義之先生
順天堂大学医学部附属順天堂医院 整形外科

 
 
 
 
 

A.脊索腫は胎生期における神経堤(notochord)に由来する腫瘍で、頭蓋・脊椎に沿って発生し、その半数が仙骨部に発生するとされています。
仙骨部の脊索腫は中年以降に多く発生し、ゆっくり増殖するため症状がでにくく、初診時には巨大になっている事も少なくありません。
薬物治療は効果ないものの、遠隔転移は生じにくい腫瘍ですので、 従来は仙骨部腫瘍の切除が行われてきました。

 

しかしながら仙骨には重要な神経もあり、手術で一緒に切除されますと術後歩行障害や排尿障害を伴うこともあります。
更に多くの大事な血管や臓器が隣接していることより、難度の高い、リスクある手術と言えます。
部位や大きさによっては手術不能な場合も多いです。
しかしながら米国の報告では、完全に切除できたものの予後は良いことが示されていますので、やはり脊索腫において切除治療は、適応や合併症の兼ね合いを考えながら行うべき治療となっています。

 

一方、重粒子線治療は放射線医学総合研究所などを中心に1996年より臨床試験が始まり、2016年から「切除非適応の骨軟部腫瘍」に対して保険適応となりました。
重粒子線は通常の放射線治療と比べ、線量分布が優れ、放射線による高い生物学的効果を持つことを特徴としています。
つまり、正常部分の被曝を抑え、腫瘍部に高い殺細胞効果を与えるピンポイントの治療をすることができます。
また、放医研が発表している成績では、仙骨脊索腫の5年局所制御率は88%、5年生存率は86%と手術同等の成績を示しております。

 

有害事象としては皮膚トラブルや神経障害が主にあげられますが、放医研が発表している成績では、2例の皮膚潰瘍で皮膚移植が必要になり、神経障害により投薬が必要であったり、筋力低下を生じた症例は15例と報告されています。
手術も同様ですが、重粒子線治療も部位や大きさや形によっては困難な場合もあります。

 
まとめると、脊索腫の発生部位や大きさにより、手術と重粒子線治療の長所と短所のバランスが変わります 。具体的には主治医または専門医と相談することをお薦めします。
 
1. Bruno Fuchs, Ian D. Dickey, Michael J. Yaszemski, Carrie Y. Inwards, Franklin H. Sim. Operative Management of Sacral Chordoma. J Bone Joint Surg Am, 2005 Oct; 87 (10): 2211-2216 .http://dx.doi.org/10.2106/JBJS.D.02693
2. 【重粒子線治療 最新治療エビデンス】 骨・軟部腫瘍に対する重粒子線治療(解説/特集)Author:今井 礼子(放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院), 鎌田 正 Source: 医学のあゆみ (0039-2359)235巻4号 Page313-316(2010.10)
3. 【がん放射線治療UPDATE 知っておけばこんなに変わる放射線治療成績】 骨軟部腫瘍 仙骨脊索腫の重粒子線治療(解説/特集) Author:今井 礼子(放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院 骨・軟部), 鎌田 正 Source: 医学のあゆみ (0039-2359)227巻9号 Page835-838(2008.11)
4. Silvia Stacchiotti, Josh Sommer, on behalf of a Chordoma global consensus group. Building a global consensus approach to chordoma: a position paper from the medical and patient community. Lancet Oncology, Volume 16, No. 2, e71–e83, February 2015
 
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